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ステップの加害者更生プログラムに52週参加されたY.Tさんから「ステップ 52回の受講を終えて」と題した寄稿文をいただきました。少し長文ですが、原文のままご紹介いたします。

 

ステップ 52回の受講を終えて

〜「学び 振り返り 気づき」を繰り返し学び 三歩進んで二歩さがりながら、

  なぜ どおしてと悩み そうか と「変化」を自分のものに〜


目次

1.家族構成・生い立ち
2.ステップで学ぶ前

3.ステップに通うきっかけ

4.ステップで学んだこと

5. 52回を学び 特に印象に残った学び

 <自分が変わるための学びとして>

 <パートナーとの関係改善の学びとして>

6. 変化したこと

7. 最後に

 

 

1.私の生い立ち

私の両親は自営で、男兄弟の4人家族で私は弟です。両親は、昭和の経済が急成長した時代の自営業者です。両親は、日々家業が忙しく、子供にはかまっていられませんでした。そのため、両親と家族旅行へ行った記憶もありません。

子供心にサラリーマンの家族がうらやましいこともありました。

両親は自営のため、休めば収入が無いので、お正月に2日間の休みしかなく、私たちの学校行事にも親は不参加で、毎日朝早くから夜遅くまでいそがしく働く姿を見て育ちました。

両親は、昭和一桁生まれで、幼いころから男はこうあるべき、女はこうあるべき、女は男に従うのは当たり前、という場面を日々見て育ちました。

2歳年上の兄とは、幼いころから性格も違い、何をしても私は劣っており、自分自身劣等感を持って育ちました。

 

2.ステップで学ぶ前

家の中で偉いのは私、子供達にも自分の思い、考えを押し付けていました。常に、妻を下に見ていました。

自分の都合のいい時には、男はこうあるべき、と「べき思考」が強く、自分が間違っていても謝らず、すべては妻が悪い、とほこ先を向けて怒っていました。

また、妻に対しては安いプライドを持って見栄を張り、時に気の弱いところがあって虚勢を張ることがありました。

他の人には、顔色を伺い、自分をよく見せようと笑顔で対応して、怒ることはあまりありませんでした。

しかし妻には暴言をはき、威圧的な態度で接して、物を壊す、暴力を振るうことで支配関係を築いていました。

結婚生活は昭和の亭主関白を装い、家族に嫌な思いを押し付けていました。

また男は外で仕事をしてお金を稼げばいい、女は家庭を守る、昔の日本人によくみられる考えを持っていました。

「お金を沢山稼ぐ人が偉い」「お金があれば何でもかなえられる」との考えと、人並み以上の生活がしたい、ほしいものは手に入れたい、との思いが強く、いくつもの仕事を掛け持ち、忙しい毎日でした。

そのおかげで経済的にはゆとりがありましたが、妻には家計費として一定額を渡し、不足した場合は理由を聞き、仕方なく渡していました。 

私は老後、将来のためにと、私がお金を管理して、自分の好きな事には惜しまず使っていました。

多く稼ぐ私の方が偉く、妻が従うことは当たり前である、という思考が強く、何事も私の考えを押し付けていました。

妻はたびたび「家政婦ではない、人間扱いされていない」と反論していましたが、毎月家計費をもらって、生活には困らないようにしているのに、なんで不平不満を言うのか、理解できませんでした。

子供たちにも父親の威厳として、父親の言うことを聞くのが当たり前とか、妻は世間が狭い、私は数多くの人と会ってきたし、社会の嫌な場面も多く見てきて社会経験が妻より多いから、私の言っている事、考えは正しい、と押し付けていました。

子供が幼稚園・小学校に行くようになり、家庭サービスと称して夏は海に、冬はスキーにと家族旅行を含め、年4、5回程度の家族旅行をしてきましたが、今思えば、私が行きたい、したいが優先で、家族の思いは参考程度のような気がします。

自分の中では、連れて行ってやっている、こんなにしてやっている感が強かったと思います。

私は仕事優先でしたので、子供たちの学校行事にはいつも妻が行っていました。

子供たちの事は、妻に任しているのに、私は子供たちが相談するのはいつも妻で、なぜ私には結果だけを妻から聞くのか、私に言いにくいことは黙っているのか、と妻に腹を立て、間違った考えで妻に暴言を浴びせていました。

ステップで学ぶ前は、DV=たたく・ける・物を投げつける、といった身体的暴力と思っていました。

だから私は、過度なDV加害者ではない、と思っていました。

私のDVは、経済的暴力・身体的暴力・精神的暴力が主で、永年家族におこなってきました。

 

 

3.ステップへ通うきっかけ

今から2年前、令和2年の8月に、妻は私のDVを恐れ、この生活がいつまで続くのか、という絶望感から、永年住み慣れた我が家を出て、長女の家に避難、別居生活となりました。 

妻が出て行った当初は、強がりとおどし、脅迫のラインを送り、返事がないことに腹を立てていました。

その間も長女とはたびたびラインをして、穏やかなやり取りもあり、妻との仲裁協力を依頼していたので、私の突然の訪問も受け入れてくれると思い、3か月目に自分の生活の都合もあり、とりあえず帰ってきてもらうことを考え、妻を迎えに行きましたが、長女・妻とも自分の考えていた再会とはまったく違った結果となり、警察を呼ばれる事態となりました。 

「なんで、どうして」と、いまだ味わったことのない気持ちで一人で帰宅しました。

再会が想像以上の結果となり、それ以後はラインをすることはありませんでした。

私は家事洗濯等は自分で出来ると過信していましたが、毎日仕事から帰っての家事洗濯は簡単ではなく、追われる生活が続き、大変であることに気づきました。 

妻は子供の世話、仕事に家事洗濯と休む間もなく働き、そのうえ永年私のDVを受け続け、家を出る決心をさせた、私の思考と行為は人間として恥ずべき行為でした。

ここにきて妻が何度も言ってきた「家政婦ではない」「人間扱いされていない」という意味がわかったようにおもいます。

令和3年5月「今後の事を話したいから帰省しますが、会うのが怖いから第三者を入れて話したい」と連絡があり、

令和3年7月「帰省当初は恐ろしいので同居は出来ない。別居生活をして、ならしてからの同居なら考える。」「DVを一切やめること、ステップに通うこと」を条件に同居となりました。

私が途中でやめるかもしれないと、二人でステップに通うことになり1年が経過しました。

私は当初、3・4回通えばいいだろう、と思っていましたが、初回の「特権意識」の学びが、過去の私のおこなっていた思考と行為、そのものでした。

回数を重ねるごとに、私の過去の思考と行動をまるで見ていたかのような学びが次々とあり、過去の自分の行った行為が人間としてまた、大人として恥ずかしく、又情けなく思い、特に苦しんだ妻と子供たちに嫌な思いをさせ、大変申し訳なく思えるようになりました。

    

4.ステップで学んだ事

選択理論

・怒りは自分自身が選択している   

・思考と行為は変えられる  

7つの良い習慣

・傾聴する 

・励ます 

・支援する 

・信頼する 

・尊敬する 

・受容する 

・違いを交渉する

怒りをコントロールする魔法の言葉    

・まぁいいか  

・ちょうどいい  

・なんでもあり   

・リフレーミング

 

 

5.52回を学び 特に 印象に残った学びとして

<自分が変わるための学び>

「特権意識」では、

・特別な権利は自分にも相手にも、ない。

「相手の権利」では、

・相手にも自分と同じ権利があり、相手の権利を尊重する考えを身につける。

「変化」では、

・相手を支配する思考をやめて、相手を尊重する思考に変える。

・暴力・怒りは支配、暴力・怒りは自分で選択している事を意識して、相手に思いやりを持って対応する。

・パートナーには、勝たない、勝てない、勝とうと思わない。

・変化するためには、まず過去の行為を認めて、相手との会話は最後まで傾聴する。

 

  考えが変われば行動が変わる 

  行動が変われば習慣が変わる

  習慣が変われば性格が変わる

  性格が変われば人格が変わる

  人格が変われば人生が変わる 

 

「支配」では、

・相手は変えられない、変えようとしない。

・相手と自分の考えは、違ってあたりまえである、と思えるようにする。

・パートナーは、もっとも近くにいる他人である、と思えるようにする。

・7つの良い習慣を身につけて実践する。

「怒りの習慣化」では、

・魔法の言葉を実践して使い、怒りを鎮める。

・まぁいいか、なんでもあり、それはちょうどいい、大丈夫、と思えるようにする。

・7つの良い習慣を実践して使う。

・こうなりたいという願望を実現するために、魔法の言葉、7つの良い習慣を使う。

「ゆがみレンズ」では、

・相手との考えが違ってあたりまえである、と思えるようにする。

・リフレーミングしていいように考える。

  

<パートナーとの関係改善の学び>

謝罪、間違いを素直に謝れるようにする。

  1. したことの事実を話す

  2. その時の思考を話す

  3. その時の相手の感情を想像し、共感する

  4. どのように変えるのか自身の思考と行為を話す

*謝罪なくしては解決できない

「相手と心の通い合う会話をする」には、

・お互いの違いを認めて、話を最後まで聞く。上質世界を支援する。

「対等平等な関係の行為」として、

・相手を人として尊重し、支配のない関係で、なんでも言える関係づくりを心掛ける。

・誰にでも感謝の気持ちを持って接するようにして、ありがとう、ごめんなさいを、おしまなく使う。

・7つの良い習慣を身につけて活用する。

「大切な人の優先順位」は、

・最優先にパートナー、次に子供・親、それぞれにふさわしい対応をすること。

「受容と共感」では、

・言葉に出して、さ行で表現して、共感を意識して会話する。

「プライド」では、

・自分の弱さを隠すプライド、他人に対して見栄を張るプライド、自分をよく見せるプライドは、すべて安いプライドであり捨てる。自分を偽ったり、大きく見せず、ありのままの姿で生活する。

「魔法の言葉の活用」では、

・まぁいいか、それはちょうどいい、なんでもあり。

・雰囲気を変えたり、間を取ったりして、怒りの思考を変えるための言葉として活用。

「健全な会話」として

・相手の意見を最後まで聞く。傾聴と受容。 

・相手の意見が正しい、正しくない、ではない。

・魔法の言葉を反復して使う、さ行であいづちをして、自分の意見は最後にする。

  

「気づきを促す3つの質問」として

・どうしたの?どうしたいの?どうしたら良いと思う?、と問いかけて話す。

・相手の意見をまず受け止めて、共感しながら質問する。

「3つの関心」では、

・パートナーに関心を持って、パートナーのあるがままの姿に関心を持つ。

・パートナーの欲求に関心を持って、欲求充足をする。

・関係性を築くには、相手の思考と行為を理解して、ゆるす、ゆるせる、余裕が必要である。

 

 

6.変化したこと

まずは、手は出さなくなり、大きな声で怒らなくなりました。 

時々ですが、不機嫌になっても、魔法の言葉を心の中で、「まぁいいか」「それは ちょうどいい」「しょうがない」ととなえ、小さなトラブルがあっても持続しなくなりました。 

また、怒り、不機嫌は、何も得るものはないし、周りを暗くする、と思えるようになりました。

  

7.最後に

一年たっても変化できずにいますが、ステップで学んでいることは、人と共存していくうえで必要であり、

大切なことを教えていただいています。ステップで学ぶことは、数多くあります。

今となってはなかなか身につきませんが、立ち止まって反省をすることはできだしたと思います。

今の生活があるのは、私の働きもありますが、それ以上にパートナーがよく我慢をし、耐えてくれたからです。

また、3人の子供たちが、道をふみ外さずに素直に大きくなったことは、いい母がいたからです。

感謝しかありません。

ありがとう。

妻・子供へのDVで、謝っても過ぎた時間は戻りません。

過去は変えられません。ごめんなさい。 

しかし、これからの時間は、妻の上質世界(楽しみの欲求)に少しでも寄り添い、妻の考えを理解できるようにします。子供達には、少しでも役に立つ父親となり、ステップで学んだことを一つ一つ実践できるようにしていきます。

これからもスッテプに通いますが、少しでも自分の思考の変化・改善のきっかけに気づけるようにしていきます。 

最後になりましたが、理事長をはじめ、ステップのスタッフの皆様、一緒に学んだ方々、ご指導・ご意見をありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。  

ご静聴ありがとうございました。

 

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