加害者更生プログラム52週修了者体験談(Oさんご夫妻のケース)
ステップのDV加害者更生プログラムに52週参加された、Oさんご夫妻から体験談を頂きました。
掲載の同意を頂きましたので、原文のままご紹介いたします。
【タイトル:これまで、そして52回を振り返って・・・】
♦出会い
夫:大学を卒業後、高校の同窓会があり、そこで元同級生に紹介を受け出会った。
初めから結婚を強く意識した交際だった。妻の身だしなみや体型にはこの頃から干渉していた。
妻:初めて会った人なのに一緒にいることが居心地がよいと思った。
自分と価値観が似ている。「けんかするほど仲がいい」
♦結婚にあたり…
互いに課題。
夫:自分の気持ちに浮き沈みがあること。
妻:「私は大丈夫。一緒にやっていける。」
・結婚する前にもケンカのようになることはあったけど、それもいずれは仲直りをすることができる。
・「ケンカするほど仲が良い」といううちの一つと考えていた。
・喧嘩や騒乱を山火事に例えて、火事にならなければ芽吹かない事柄もあるとして正当化。
♦結婚初期①
夫:支配的だった。妻の体型や身だしなみについて、実家の両親共々干渉。
妻はそのことに苦痛を訴えるようになった。
・全く関係の無い事まで引き合いに出して妻を責め立てた。
・「当然のこと」、「妻のため」という確信を持って行動していた。
♦結婚初期②
夫:相手を「ただ傷つけるため」の悪口雑言(いわゆる言葉の暴力)
これら習慣はこれまでにも・・・。
→大学の頃には既に、激しい暴力と共に両親(特に母親)等に行っていた。
→これはもう自分の「癖」なのであり、生涯治まることのない荒々しい部分なのだと正当化。美化、危険な陶酔感。
妻:自分はフルタイム 夫:不定期
男性が働く、女性は家を護る。うちはこれと逆だと考えていた。
・夫の調子が悪く、家事をしないで部屋で横になっていると責めることがあった。
♦出産前後
夫:第一子(長男)、第二子(長女)いずれの出産にも立ち会う。
当初は誇らしくさえあった。→しかしこれは後に驕りとして醜い部分が肥大化。
長男出産直後は、怒りの感情は少なかった。
・育て方を巡って自身の実家が干渉してくるようになった時、自分は妻を護ることをせず、
実家が正しいとして妻を責め立てた。
・自身が勝手に無意味な怒りを爆発させて、しばしば家族の心を大いに傷つけた。
意味の無い、爆発的な怒りを、自身ではどうコントロールしていいのか判らなかった。
・ハネムーン期と爆発を典型的に繰り返す。
♦自宅購入、引っ越し後①
夫:自分はいつ爆発するのか、自身でさえ判らない状況。自身の怒りを正当化する感覚が強かったのか・・・
自身が根拠のない怒りに支配されていたともいえるだろう。
・引っ越しして間もなく、ほんの些細なことで怒りを爆発させる。
身の回りの物(ガラスや瀬戸物含む)を床に叩きつけ、新居のダイニング、キッチンを破壊。
・長男の誕生日の時、楽しく晩酌。次の瞬間騒いでいる子供達を怒鳴り付け、
守りに入った妻に殴る、蹴るなどの暴行。
・不安定な心から逃げるために飲酒。→こうしてステップと出会うまで、通算3回警察沙汰を起こした。
♦自宅購入、引っ越し後②
妻:暴れた状態から、落ち着いた夫は優しかった。
・ささいなことでキレてしまうことが、次第にエスカレート。
・警察を呼ぶ時の心境。
1回目 さすがに警察を呼べばもう二度としなくなるだろう
2回目 また繰り返し。こんなことで呼んだらいけないかもしれない。
→もう警察には連絡できない。家族にもまたかと思われてしまう。
3回目 警察の方「このようなことが続くのであれば別れるということも考えた方がいい。
→もうどこにも相談できない。
・どうしたらよいか先が見えない時にステップを知る。
♦ステップとの出会い
妻:最初の面談、理事長とミスター、九州から見えていたNさんの3人は私のことと合わせて、
夫を否定せず、受け止めてくれた。
・私は夫が嫌いなわけじゃない。家庭の中でケンカではなく暴力になり傷つけ合い、
すべてが崩壊してしまうことをやめたかっただけ。
・「とにかくご主人を一度連れてきて下さい。」→それだけで救われた気分だった。
♦ステップとの出会い
夫:訪ねたきっかけ→妻が一度事務所に伺った時、危害を加えていた自分の側にも立って話を進めていただいたから。
・正直、この時はまだ妻の側にも原因があるに違いない、出る所へ出てギャフンと言わせてやろうという気持ち。
理事長にあえて挑戦的な態度を示したりもした。(今から考えれば顔から火が出そうな話である。)
・「やり直したい。けれどどうやったらいいのかわからない。もうこんなに自身の罪状は積み上がってしまった。
最早手遅れだろう。ただ、償いとなるのならば、妻の選んだこの場所に通ってみよう。」
♦受講中(プロセス)
夫:はじめのうちは、まだ積極的に用語、理論を口にしたり実践することに抵抗があった。
・まずは自身で目標を立てた。徳川家康の遺訓の中から「怒りは敵と思え」。禁酒。
・怒りに関しては、今まで自分が正当化してきた悪習だったからなかなか難しかった。
♦受講中 5回目の頃
夫:通い始めて5回目程の頃、5日間程調子が悪く、寝室とは違う別室に籠ってしまっていた。
・家族が就寝した後、ウィスキーを大量に一気にあおった。自分の苦痛を思い知らせてやろうと、
妻子の眠る寝室に大声を出して飛び込んだ。長男を大声で怒鳴り脅し、眠る娘を踏みつけ、妻に殴る蹴るの暴行。
・大変な過ちだと自覚したが、「どうせ変われねえんだ」と投げやりな気持ちを引きずることとなった。
その直後の加害者プログラムに、色々な方から批判、罵倒を覚悟で出席。
この場では決して暴力が肯定された訳ではないが、制御不能で苦悩している自分に対しての温かな励ましが
あった。ここから主体的に本気で取り組もうと思った。
♦受講中 5回目の頃
妻:大声を出して部屋に入ってきた日。「もうこれで終わった」と思った。
プログラムに参加していてもこうなってしまう。
・以前とは少し違い私は絶望ではなかった。ステップで一緒に参加してく中で、自分を立て直す方法を学んだ。
・こんな状況だけど、それを語れる場所がある。強い味方。こんな状況だけど、自己充足。
その恐怖に支配されちゃいけない。私は私でいい。家を子供と飛び出してホテルに一泊。
GOTOもやっていたので格安。→リフレーミング
・夫は今、最善の選択をしている。暴力は絶対に許せない。それを夫も分かっている。
その分やってしまったことにかなり苦しんでいる。気分障害について自立しようとしているのが分かる。
♦受講中
夫:ある時、傾聴だけやってみるかという気持ちになりやってみた。後は芋づる式に受容、尊敬、支援、交渉、
信頼、励ます。(もし正式な順序があったのならすみません)
・毎週ステップのセッションに参加を続けること、様々な方々の話を聴いたり、また時にはこちらから働きかける、
そして自身の行動を振り返り、どの部分をどれくらい調整した方がよいのかじっくりと考える時間、場があると
いうことはさながら自身を改めて鍛錬しなおしているようだった。
・ちょっとしたことでイライラしにくくなってきた。感情で叱らなくなってきた。妻との喧嘩も減った。
そして、妻が、家族がもっと好きになった。心の根拠のないマグマだまりが、とても小さくなっていた。
♦今、思うこと…
妻:52回の振り返り、過去を見つめなおすことはかなりつらかった。だからこそ、この52回通っての発表は
大事な通過点。
・この振りかえりを二人で作っている最中、今、気が付いたこと。そうだったと再認識することがあった。
・夫は今、暴れるほどの怒りを表すことはない。夫の両親や兄弟に対しても同じ。
・体調のよい時も、悪い時も、とにかく通い続け、ステップでの学びを真摯に受け止める夫。
通い続けてくれたことで、私自身が大切にされているという感覚。
♦今、思うこと…
夫:これから自分達だけで学んだ事を実践していくことが本当の意味で試される。
・自分がトラブルをもたらしていたのは、そんなに過去の話ではない。
・自身の周りを疾患を理由に傷つけず、自己を効果的に充足させ、家庭の安定を護るのか、日々考えて
実践することを生涯に渡って行う。
・厳しい事ばかりではなく喜びもまた同じくらい感じてはいる。
まるで同じ相手と二度結婚する機会が与えられたような気分である。
♦みなさんに感謝
・ステップの栗原理事長、スタッフの方々。ともに闘ってくれた日曜16時のクラスを始めとする参加者の皆さん。
ありがとうございました。